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2009年11月16日

☆カフェロワイヤル・・・ブログ・ショートストーリー

「ゆっくりおやすみ」
うとうとまどろむ百合花の耳元に口を寄せ、
雨宮が優しくキスをした。

うっすら瞼を開けると、
いつの間にきちんと身繕いした雨宮が
浜辺に打ち上げられた魚のようにぐったりうつ伏せになった
自分を見下ろして立っていた。

部屋の灯りが逆光になり、
男の表情は良く見えなかったけれど
シャワーを浴び、香りの良いコロンを身に纏った雨宮は
ゆっくりと手首のカフスボタンを留めている。

満足そうに微笑んでいるようにも思えたのは、
ベッドに寝そべる百合花から視線をそらさずに
しばらくじっとその場に佇んでいたからだろう。

「リハーサルには遅れないように」

雨宮の言葉は しっとりと甘く心に響く。

「行ってらっしゃい」
小さく囁く百合花の声を背中に聞きながら
雨宮はタキシードを片手に部屋を出ていく。

雨宮が部屋を出て行った後は
ダブルベッドを占領して昼過ぎまでゆっくり眠り、
ホテルのルームサービスに頼んであったモーニングコールで目を覚ます。

ベッドの上で小さく伸びをした百合花は、
携帯電話を手に取ってメールを確認した。

親友の亜里沙と、母からのメールが1件ずつ。
そして・・・純一からのメールも。

「逢いたい」という、たった1行のメールに少し胸がときめく。
次の瞬間CALLが鳴り、着信を確かめずに電話に出ると
声の主は純一だった。

元気だったかと訊かれて、自分が今まで元気だったかどうか
百合花は思い出そうとしていた。

1年前に突然別れを告げて、
自分の前から去って行った当の本人が
元恋人の自分に元気だったかと訊いている・・・。

風の噂で純一が
絵理子というモデルと付き合っていると聞いた時、
確か自分は酔って暴れて親友の亜里沙に迷惑をかけて・・・
そんな出来事が頭を過ぎりながらも、
百合花は「元気だった」と明るく答えていた。

確かに今は元気だったから。
他に言うべき言葉も浮かばない。

今日のリハーサル開始は午後5時の予定だったので、
取りあえず午後3時に純一と会う約束をして百合花は電話を切った。

バスタブに熱いお湯を溜めて、ラベンダーのバスボムを入れると
百合花は細くしなやかな裸身を湯舟に沈めた。
シュワシュワと重曹が溶けて浴室の中にアロマの香りが
充満していく。

20階建ての高層ホテルの窓から見える都心の緑地が
小雨に煙っている。
ブラインドを開け放したまま浴槽の中で
百合花はぼんやり公園を眺めていた。

あの日・・・
純一と別れて半年後に この部屋で自分は雨宮に抱かれた。
15歳も年の離れた雨宮は、
時に優しく、時に思いがけず激しく百合花を包み込み
慈しみ、愛してくれた。
妻子ある身ではあったけれど、雨宮は百合花を誠実に思ってくれた。
湯船のお湯が冷めるまでしばらく物思いに耽っていたが、
突然百合花は立ち上がり 熱いシャワーを浴びて、浴室を飛び出した。

バイオリンケースを抱えて地下鉄に乗り、劇場のある駅へと向う。
純一と待ち合わせたのは、劇場の中にある喫茶室だった。

約束の時間より20分も早く着いたのに、純一は待っていた。
窓際の席で俯いて本を読む純一は、相変わらず端正な顔立ちだった。
少し痩せたかも知れない・・・そして百合花の目には純一が
以前よりも寂しげに見えるのだった。

挨拶をしてコートを脱いだ百合花が席に座る瞬間に、
純一は目を瞠っていた。
光沢のある深い真紅のドレスを着た百合花は驚くほど美しく、
純一の知っている百合花では無かった。

付き合っていた頃の、百合花の他愛もない我が儘や幼さに
少し辟易していた時期に大人の女性に出会った。
絵理子は純一の若さを大らかに受け入れ、理解してくれたので、
純一は百合花と別れる決心をしたのだった。
しかし1年経つうちに、いつの間にか絵理子に対する愛情が冷めていた。
いつも自分を年下として扱う絵理子の愛情が干渉に思えて疎ましく
自分から一方的に別れを告げたかつての恋人が懐かしく思えて来たのだった。


「やり直さないか」
ウエイターが注文のコーヒーを百合花の前に置くのを待って
純一が唐突に言った。

コーヒーを置いてもウエイターは席を離れなかった。
「?」純一が怪訝そうに見上げると、
ウエイターは何事もなかったかのようにスプーンに角砂糖を乗せ、
何かの液体を注ぎ、おもむろにマッチで火を点けた。
香り高い洋酒の煙が一瞬鼻先をかすめた瞬間、
スプーンを揺らして息を吹きかけ、百合花が火を消した。

それはまるで、何かの儀式か合図の様だった。

呆然と見守る純一に百合花が言った。
「カフェロワイヤルよ。こうしてブランデーを燃やして香りを引き出すの。
甘く焦げたお砂糖は、風味を増して苦いコーヒーをまろやかな味に変えるのよ」

純一が去り、
彼の新しい恋人に身を焦がすほど嫉妬して狂った過去を静かに思い出しながら
百合花はそっと言った。

「恋も同じね・・・。
一度は燃えてもやがていつかは炎が消える・・・。
でもその前にブランデーに出会って、もっと激しく燃えて
いつか美味しい大人の女になっていくのよ・・・」

スプーンの中の液体をコーヒーに沈めながら、
妖艶に微笑む百合花は輝くばかりに美しかった。

そして、奥の席で楽団員と談笑している雨宮が二人に気がつくと
百合花はコーヒーカップを持ち上げて乾杯の仕草をした。

雨宮もにっこり微笑んで、百合花にかすかに頷いて見せるのだった。





☆カフェロワイヤル・・・ブログ・ショートストーリーカフェロワイヤル

【材料】
深煎りコーヒー 130cc
ブランデー(37度以上のもの) 20cc
レモンやオレンジの皮 適量
角砂糖 1個





ナポレオンが愛したこのコーヒーは
香り高く、飲む人に限りない安らぎを与えると言われています。

スプーンの上に角砂糖をのせ、
ブランデーを角砂糖にしみ込ませ、火をつけます。
早めに火を消したほうが、ブランデーの香りが高く、
おいしく飲む事が出来ます。
そのままコーヒーの中に沈め、かき混ぜて飲みます。



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Posted by ☆キララ☆ at 09:00│Comments(12)ブログ小説
この記事へのコメント
わぁ~希美さん☆☆☆
すごい素敵な感じ(≧▽≦)

途中から私が主人公になったような気分で読みました♪(*'-^)-☆
Posted by ayame at 2009年11月16日 10:00
こんにちは これまた素晴らしい前書き
百合花さんは希美(のぞみ)さんではないかと想像して
読んでしまいました。
純一役を演じてみたいような ちゅらさんじぃじぃでした。
今週も宜しくお願いします。
Posted by (有)ちゅらさん(有)ちゅらさん at 2009年11月16日 12:58
本当~~~
長編小説読んだ気分に!!!

すごい!!!

ミミりんも主人公は希美さんでは
なかろうかと・・・・ いひひ。

このコーヒーってどんな味なんでしょ。
苦くないのかな。

ミミりんはライバル役にでも・・・
Posted by ミミりん at 2009年11月16日 15:28
レモンやオレンジの皮は、どうやって使うんですか?やってみたいです(^_-)-☆
Posted by Anela at 2009年11月16日 15:44
私のおウチの空間も
カフェロワイヤルになってきちゃったぁ☆
Posted by ・りえ・ at 2009年11月17日 07:02
こんばんは~
希美さん(^^♪

つい夢中で読んでしまいました!!

希美さん
いつかは本出してくれそうな気がしますヽ(^o^)丿

百合花になってみたい!(^^)!
あっ!空想の世界が・・また開きました!
Posted by もも助 at 2009年11月17日 22:51
ayameさん、こんばんは。
それは何より、素敵なお言葉です。
百合花がayameさんの中にも居る・・・という事ですね。
作者としては嬉しい限り、有り難いコメントです。
どうもありがとうございます。。。(^^)
Posted by 希美(のぞみ)希美(のぞみ) at 2009年11月18日 02:10
(有)ちゅらさんサン、こんばんは・・・!
リアルに感じられると言うことは、それだけで最上級のお褒めの言葉です。
ありがとうございます<(_ _)>
純一役はちゅらさんサンという事で、配役決定ですね・・・^^
その際は、ひとつ宜しくお願いします。。。(^_-)-☆
Posted by 希美(のぞみ)希美(のぞみ) at 2009年11月18日 02:15
ミミりんさん、こんばんは!
はい、ライバル役・絵理子に決定!早い者勝ちデス・・・(笑)
年末もしくは新年会の余興のラブ・ロマンスコメディも、アリでしょうか?
いえいえ、真面目なドラマ化でも、
ミミりんさんの演技力で大成功間違いなし・・・(・∀・)
あ・・・ミミりんさん主演のストーリーが閃いちゃった・・・♡
☆お楽しみに・・・☆ コメントありがとうございます!
Posted by 希美(のぞみ)希美(のぞみ) at 2009年11月18日 02:23
Anela様、こんばんは!
レモンやオレンジの皮は香り付けです。
あれば尚、良いというスパイスです。
そのままコーヒーに浮かべるか、
あるいは角砂糖の下に敷いてブランディーを注ぎ、
焦げない程度に香りを引き出して加えるのも良い方法でしょう。
いずれにしても火を点けたらすぐ消すことです。
くれぐれもブランデーの香りが逃げない様にお気をつけ下さいませ・・・^^
Posted by 希美(のぞみ)希美(のぞみ) at 2009年11月18日 02:31
りえさん、こんばんは!
手軽にお家カフェですね・・・?(⌒-⌒)
ブランデーの香りが漂って来ましたか?
今回はアダルト&セクシー編でしたが、お気に召しましたでしょうか?
メルヘンも良いけれど、これからこの路線も秘めやかに
楽しく書いて行きたいと思いますので宜しくお願いします(・∀・)
コメントありがとうございます。
Posted by 希美(のぞみ)希美(のぞみ) at 2009年11月18日 02:38
もも助さん、こんばんは! ☆(・∀・)☆
うれしいコメントありがとうございます!
私もそれを目標に「願って、祈りつつ」書いております。
たくさんのイメージをどうやって文章にして行くか・・・?
考えるのも楽しい作業・プロセスですね。
もも助さんのブログからも、空想豊かな世界を羽ばたく名人と見ました^^
もも助ショートストーリー、楽しみにしていますよ。
きっともも助さんなら書けるはず。ぜひTRYしてみて下さい。
Posted by 希美(のぞみ)希美(のぞみ) at 2009年11月18日 02:55
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